| 受賞コメント |
| 当時あわよくば、どこかで生活を始めたいと思いながら旅をしていたわたしにとって、写真を撮る意味は、だんだん不明になっていました。もう7 ヶ月も写真を撮っていませんでした。そこは初秋のパリ。上空は果てしなくグレーで、空気は乾燥して肌寒く、盲腸がしくしく痛むうえに、わたしはひもじかった。そんなとき「おなかがすいた。空気が乾燥して、目が乾く」と、ある人に手紙を書きました。戻ってきたハガキには、「生きているんですね。手紙ありがとう。写真は、とりあえず、撮っておいた方がいいよ」とだけ、あっさりと書いてありました。いま思うと、その一言のおかげで、写真が残っている。そして、その写真を見ながら、わたしはあのときを思い描くことができる。写真集ができたら、その人にお礼を言えると思うと、とてもうれしい。 |